TSURUMI RESEARCH INSTITUTE OF CHILD EDUCATION

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更新日 2014-04-03 | 作成日 2008-01-26

「国際モンテッソーリ教育の100+1年祭」に参加して

河田敏子

 1月9日から3日間に亘り、奈良県新公会堂にある能楽堂において、「国際モンテッソーリ教育の100+1年祭」が行われた。ひのきの香りする会場は 1991年に第21回国際モンテッソーリ世界大会が行われた思い出の地であり、国際会議にふさわしい場となった。期待に胸膨らませて日本全国さらには海外から集った300名あまりが、熱心に研鑽をつみ、心通わせた密度高い研修の場になったことはいうまでもない。

まず、AMI会長のアンドレ・ロバーフロイドさんの基調講演において今大会のテーマが明確になった。アンドレさんはユニセフの活動を通して、とくに恵まれない戦争の只中にいる子供たちの人道支援にあたってこられた。「モンテッソーリ教育100年の実績を振り返り、さらなる100年に世界平和を実現できるよう、私達のできることがモンテッソーリ教育の普及である。」とといておられた。「人類に志するすべての子ども達に目を向け子どもから学びながらメソッドを発達・拡大していこう。」とよびかけていた。

また、日本モンテッソーリ協会の会長である前乃園幸一郎さんも、「世界中のどの子ども達も皆同じであり、つきない希望の源である。創造者としてどの子もよい方にかわるという確信をもち、その自発的な成長に添い、生命の援助をしていかなければならない。人類の平和と統一を目指すために、我々による子どもの発見と可能性への働きかけが、大きな鍵になる。」と講演を結んでおられた。

ジュディー・オライオン先生は、「吸収精神」の見地から、3歳以下の子どもの無限の可能性について、実践のスライドを交え、講演された。「私たちに望まれる事は、するどい観察能力であり、それにより、子どもの潜在能力を直感し、発揮できるようにする必要がある。」といっておられた。

シルバーナ・モンタナーロ先生は、「0〜2歳は、発達が最も早く、人格の核ができあがる人生でもっとも重要な時期である。」といっておられた。「私達がなすべきことは、モンテッソーリの発見の追及・潜在能力の認識・良い環境をあたえることであり、さらに両親へのアプローチが大切である。潜在能力エネルギーがうまく使われなかったときに逸脱がおこる。」というところは、なるほどと実感した。子どもが良い方向に変わると親も変わる。親がかわると子どもも変わるのは、実際に経験するところである。

相良敦子先生は、梶山モンテッソーリスクールにとって、大変つながりの深い先生である。今回の講演の中でも 我が園の卒業生の追跡調査が引用されていた。私の娘たちがサンプルとして含まれていることを思うととてもうれしく感じた。
モンテッソーリ教育を受けた子どもと教育現場で問題のある子どもの対照比較がおこなわれていたが、明らかに、日本において行なわれてきた教育が、どれほど子どもの自然な成長を無視し、しかも時代の変化に振り回されて現在の混乱を招いたかは、明白であった。

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幼児期に、経験すべきことを経験しないで育った子どもたちが、つまり自然の法則に沿って生きられなかった子どもたちの深刻な歪みを認識させられ、モンテッソーリ教育現場で立証された根拠を世に問う責任を感じた。

さて、今回の講演の中で、異口同音に言われたことは、効率第一主義に走る社会の弊害である。生活のプロセスを省くことによって、合理的に早く結果を出そうとするあまり結果だけが重んじられてはしないか。ゆっくりと作業を通しながら内的な仕事の成果から得られる満足感を子どもは本当は大切にしたいのではないだろうかと。

ルックミニ・ラマチャンドラさんは、「手の教育がおざなりにされ、知性と精神がばらばらである。」といっておられた。一刻もはやく誰もが気がつき、過程をも大切にできる社会をとりもどしたい。

脳科学者である、小西行郎先生も、成果主義により発達障害をもった子どもたちが、社会からうけいれられなくなったことを指摘した。
「手の知恵」の著者である藤原房子さんは、日常生活の中で手の果たす役割を実感しながらも、一方で家庭に女性を縛る家事を簡略化してきた。このアンビバレントな心理状態(互いに矛盾する2つの価値をもつ心理状態)の中でいかにして現代社会で手の技を継承していくのかを講演された。このお二人の話はモンテッソーリ教育の分野を超えて、大変興味深く聞く事ができた。いろいろな立場をこえ、さまざまな分野の人が繋がり、今後の教育について話し合っていく必要があると感じた。

最後に松本静子先生の講演について述べよう。静子先生は、私達が自然にモンテッソーリアンとしての精神に立ち戻れる良い機会を与えてくださる。講演の冒頭に「創造する子供」から「ああ神よ、われらが、童の神秘に入らしめ、汝の正義と御旨によりて、われらが童をしり、愛し、童に仕わしめ給え。」を掲げていらした。この言葉は、子どもに仕える、生命に仕えるわたしたちが、絶えず心にとめておかなければならない願いであり、今大会の根底にながれる事である。「日本におけるモンテッソーリ教育の歩み」について述べられたあとに、今後日本においてどのような教育環境の変化が予測されるかを考察されていた。障害児を統合教育のなかにうまくいれていくこと。外国からの移住した子ども達が今後増加していくこと。幼保一本化による認定子ども園の増加。絶えず時代の流れを把握し、洞察なさる姿勢に感動した。

以上、今大会の内容を大まかにかいつまんでみた。すべてを踏まえたうえで、いったい私に何ができるのだろうと考えた時に、まず言えることは、日々の子どもたちとの生活を大切にしようということだ。お仕事ひとつひとつの提供をこれまで以上に丁寧に、生命の輝きに答えられるように、自らの技術の洗練に努力を怠らないようにしよう。そして、母親にモンテッソーリ教育の素晴らしさを子どもを通して伝えよう。ひとりでも多くのこどもたちがモンテッソーリ教育に触れる事ができるように、理解者が増えるように教育についてかたっていこう。小さな積み重ねが大きなうねりとなって、明るい未来平和な世界に繋がるように、気持ちを新たにした良い機会となった。

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「国際モンテッソーリ教育の100+1年祭」特集

1月9日から3日間に亘り、奈良県新公会堂にある能楽堂において、「国際モンテッソーリ教育の100+1年祭」が行われました。そのレポートをお届けします。